パンは、全世界で愛されている食文化の象徴といえます。ですから、パン自体で国をイメージさせるくらい食べ方や形、味に違いがあり、それぞれが魅力的なのです。
 ここでは、世界各国を代表するパンを皆さんに紹介します。皆さんは、いくつ食べたことがありますか?
パンの豆知識
− リーンなパンとリッチなパン
 パンには、大きく分けると「リーンなパン」と「リッチなパン」の二つあります。
 まず、「リーンなパン」とは、小麦粉とイースト、それに塩と水だけで作るパンをさします。言わば、パンの基本です。材料がシンプルなため、のびにくくやぶけやすい生地なので何度かパンを作って生地の扱いに慣れていらっしゃる方におすすめです。
 一方「リッチなパン」とは、リーンなパンの材料に更に、卵や、バター、ショートニングなどの油脂分を生地に練りこんで焼いたパンで、文字通りちょっと贅沢なパンなのです。手作りパンにチャレンジするには、生地がのびやすく扱いやすい「リッチなパン」からが無難でしょう。
 
世界のパン


パンの歴史が古く、種類も多い。盛んな小麦栽培がもたらした白いパンの宝庫。

イングリッシュマフィン

 イギリスの伝統的なパンです。若干のショートニングを加えますが、基本的な、リーンなパンです。
  焼き上がりを八分ぐらいで抑え少々おきます。 食べるときに周囲にフォークで穴をあけてからトーストしバターをたっぷりぬっていただきます。 サンドイッチにしてもおいしいパンです。




 虎の毛皮模様が浮かびあがる、ダッチというオランダ独特のトッピングがポイント。

ダッチブレット

 オランダでは“ティーゲル・ブロート(虎パン)”と呼ばれる、リッチタイプのパンです。
  このパンの表面に塗るトッピングが市販されているほど、オランダ国内では日常的に焼かれています。
  この、イースト入りのトッピングは、焼く直前に塗るのがポイントです。




 リーンなパンの代表格、皮がパリっとした、フランスパンと、もっともリッチなブリオッシュを生み出しました。

クロワッサン
 フランス語で三日月、という意味のクロワッサンですが、最初にこのパンを焼いたのはオーストリアのパンやさんでした。
 
トルコとの戦勝記念に焼かれたといわれる、このリッチなパンは、今や、大きなカップ一杯のカフェ・オレとともにパリっ子の朝食のスタンダードになっています。

フランスパン
 一口にフランスパンと言ってもバケット・ブール・クーペ・フォンデュと形によって呼び方は様々です。焼き上げてからの味の劣化も早く、そのためフランスでは食事時間に合わせてパンが焼かれます。
  フランスパンが上手に焼ければパンは卒業、という程、難しいパンです。レモン汁を入れてイーストの働きを助けてあげるのがポイントです。

ブリオッシュ
 あらゆるパンの中でもっともリッチなパンのひとつです。日本の鏡餅のようなかわいらしいスタイルが目を引きます。
  バターと粉を同量まで増やす、卵を増やすなどしてさらにリッチなパンにすればお菓子に近いパンになります。
  大量の油脂(バター)を入れますから、生地をよくこねて小麦粉の中のグルテンをよく働かせるようにしましょう。




 山と水の国。パンの歴史は4600年にもわたります。

パン・ド・ラ・カンパーニュ
 カンパーニュとは“田舎の”とか“地方の”とかいった意味。
  この素朴でリーンな田舎パンの味わいはおとなりフランスの物ととてもよく似ています。
  もともとはとても大きなパンですから、ご家庭のオーブンにあわせて大きさを変えて作ってみましょう。




 ヨーロッパにおけるパンの源。リーンなかた焼きパンが特徴。

カイザーゼンメル
 オーストラリアの食卓用パンでは代表格。上面にはいった5つのくびれ目が特徴です。
  水分の少ない、やや硬めの生地を使うという形態は、古代ローマ時代のから受け継いでいますが、あまりこねにくいようでしたら若干水分を増やしても構いません。




 ジャガイモと並んで特産のライ麦を使ったパンは400種以上

ライ麦パン
 ドイツのリーンなパンといえばまずこのパン。
  粉の4割以上をライ麦にして作ります。
  外側がカリッとするまでこんがり焼いて、サンドウィッチにしてハムやチーズといただきます。
  素朴さが身上こののパンはどんなものにもよく合いますから、ジャムをのせてティータイムのお茶請けにしてもよいでしょう。

ラウゲンブレッツェル
 カリカリしたブレッツェルも有名なドイツパンです。
  三角形を三つ集めたような独特の形はパン屋さんの看板にも使われています。
  特徴的なこの形は、ピラミッド(三角形)を尊んだ古代エジプトにルーツを発し、中世の僧院では祭日用として焼かれていたともいわれています。
  アルカリ溶液につけて、焼きあげた独特の塩味は、ビールのおつまみに最適です。




  太陽の国の、バラエティ豊かな陽気なパン

フォカッチャ
 フォカッチャというのは「火で焼いたもの」という意味です。
  フォカッチャはプレーンなパンで、一説によれば後述のピッツァの原型ともいわれています。
  ピッツァと同じリーンな生地とにんにくとローズマリーで作る素朴な味わいは、オリーブオイルの香りが強い、イタリア料理にとてもよく合います。
  手でちぎっていただきます。

ピッツァ

 今や世界中に広がったピッツァはもともとイタリア南部で生まれました。
  そもそも円盤状の丸パンはイタリアだけでなく、世界各地の文明に存在していました。
  イタリア南部に住んでいたエトルリア人の丸パンが、ピザの原型となったとされています。
  上にのせるトッピングはこのみのもので結構ですが、あまり水分の多いものは適しません。
  いずれもイタリア名産のモッツァレラ・トマト・オレガノのピッツァがもっともトラディショナルといえるでしょう。




 私達になじみの深いデニッシュペストリーの国

 デニッシュペストリー
 デニッシュペストリーは、デンマークの象徴とも言える食べ物です。
  日常食べるパンとしては、北欧特有の黒パンが主流となります。
 ペストリーとは“お菓子”といった位置付けで考えられていることから、デンマークの伝統的お菓子といったところでしょうか。




 パンの原料、小麦粉の世界最大生産国のパン

ピロシキ
 フィリングと呼ばれる肉あんをパン生地で包んであげた、黒パンと並ぶロシアの代表的パンです。
  生地はリッチな生地を使いますが、パイ生地を使っても美味しくいただけます。
  日本では油であげるのが一般的ですが、よりヘルシーに、オーブンで焼いても構いません。




移民の国のバラエティ豊かなパン

4種類の穀物パン
 小麦・トウモロコシを始めとして、多くの種類の穀物が大量生産されるアメリカではそれらを使って様々なパンが焼かれています。
  ひき割り麦を使用し、麦本来の甘さを味わうもの、トウモロコシを使用した、コーンミールブレッド、オートミール(カラス麦)入りのオートミールブレッドなど。
  私達からみたらいずれもリッチなパンです。
  世界で初めてパン生地に牛乳を入れたのはアメリカ人でしたが最近のアメリカの主婦達の傾向としてはより“自然食パン”に嗜好が移ってきているようです。




カレーの国の素朴なパン

ナン
 イランのパンの流れを汲む、最も原形に近いパンです。
  インド南部では米が主食ですが、北部ではこのナンをタンドールというベル型の窯で焼いたものを主食にしています。
  小麦粉、塩、水だけだけでリーンな生地を作り、無醗酵で薄くのばして窯に直接はりつけて焼くのですが、釜のかわりにフライパンを使って焼きます。
  スパイシーな料理と大変よく合います。




 蒸し器で蒸して作る、中国独特のスタイル

肉まん
 中国の“蒸す”パンは中身の入らない“饅頭”と中身の入った“包子”にわかれます。
  いずれもヨーロッパのパン同様、中国では米と並ぶ主食として親しまれています。
  肉まんは、蒸したてを手に取り二つに割ったとき、中の肉もハラリと割れるものが美味しいといわれています。




世界有数の菓子パン王国

メロンパン
 メロンのようなトッピングでおなじみの、日本産菓子パンの代表です。
  関西(主に京都)では“サンライズ”と呼ばれることもあるようです。リッチな生地を使い、メロンのような格子模様はナイフの背を使ってつけます。
  あまり焼き色がつくとせっかくのメロン模様も台無しですから、20分程度できれいに焼き上げるようにしましょう。

あんぱん
 メロンパンと並んで日本の菓子パンの横綱格です。
  明治初期、銀座の木村屋が作り出したこのパンはほどなく皇室献上品になりました。
 
へそに見たてた中央の穴に、チョコンとのった桜の塩漬けは、あんの甘味と程よく調和します。
  中に包むあんはなるべく水分の少ないものを使用するのがポイントです。
  水分が多いほど、焼いたときに内部に空洞ができやすいのです。